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東急世田谷線沿線 老舗の店じまい

「招き猫」の豪徳寺

昨年にご依頼をいただいた、戦前から3代に亘って続けてこられていたお店の閉店お手伝い。

商店街にあったお店を改装し新入居者様に貸し出されることが決まり、先日、東急世田谷線沿線にある新装店舗にご挨拶に伺ってきました。

お店の最終営業日、店主様が名残惜しそうに、棚や商品に「ごめんねぇ」と何度も仰っていたご様子が心に残っていましたが、新しくなったお店もとても素敵な設えで、店子さんはオープン前の準備を進められていて、皆様満面の笑み。

私も少しはお役に立てた満足で温かい気持ちになって、豪徳寺まで御礼参りに行ってきました。

招き猫発祥の地ともいわれる豪徳寺は東急世田谷線の「宮の坂」駅から歩いて数分です。

寛永10年には世田谷領が彦根藩の支配となり、藩主の直孝が鷹狩りに出かけた際、寺の前を通りかかると、門前で住職の飼っていた猫が手招きをしていたそう。猫に導かれるままお寺に入るやいなや雷雨となり、猫のおかげで難を逃れた直孝が改築したこのお寺が彦根藩主・井伊家の江戸における菩提寺に。この2代藩主・井伊直孝の戒名「久昌院殿豪徳天英大居士」にちなみ豪徳寺と改号されたと仄聞しています。

このお寺の境内にいる無数の招き猫、なかなかの壮観です。そして全国の愛猫家の絵馬が奉納されていたり、思わずお土産の豆猫を手に、誰かに蘊蓄を傾けたくなってしまうお寺であります。

豪徳寺の招き猫


そして2022年が明け、今年も多くのお店から閉店のご相談が寄せられましたが、先日もまたご縁があって東急世田谷線沿線にて、開店50年を超える和菓子屋さんの店じまいをお手伝いしてきました。

私が生まれる前から地域に愛されてきたお店です。お話をお聞きすると、初代の店員さんがご結婚され、そしてお子様が生まれてお店に関わり、そのお子様──つまり初代のお孫さんがお客様としてご来店されるといった物語がお店に詰まっているそうで、長い歴史の重みを感じますね。

日本は企業長寿の国

東急世田谷線沿線のみならず、実は、日本は世界一の企業長寿国です。

創業から1世紀を経てなお現在も営業している企業数は2019年の帝国データバンクのレポートによると33,259社。COSMOS2登録全企業の2.29%が業歴100年以上の老舗企業となるそう。

引用:株式会社帝国データバンク「特別企画: 「老舗企業」の実態調査(2019 年)」

これは世界規模最多、2位アメリカの2万社弱を大きくリードしていて、創業から1世紀を経た世界中の企業のうち、およそ4割が日本に集中していると言われています。

世界の長寿企業

参考:日経BPコンサルティング「世界の長寿企業ランキング、創業100年、200年の企業数で日本が1位」

この突出した結果は、日本の伝統を重んじる気質や文化が影響しているためか、それとも外圧が少なかったからなのか。

注目すべきはレポート内での年商規模で、日本における老舗企業数が最も多かったのは「1億円未満」(13,786社)で、「1億~10億円未満」(12,986社)がこれに続くとのこと。つまり、業歴の長さと事業成長はリンクしていません。

以前に深刻な後継者不足についても触れましたが、そこへ昨今の厳しい経営環境。

代々つないできたバトンをどうつないでいくのかは企業長寿国である日本におけるこれからの課題になっていくでしょう。根底にある「事業をたたまない美学」ともども、どう向き合っていくのか、「これから」を引き続き考えていきたいと思っています。

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