本八幡のビジネスホテル
こんにちは、日本初の「店じまい」専門家、ショップデザイン腰原です。
あらゆるジャンルのお店の閉店相談を承っていますが、最近ではホテルや旅館のご閉館のお手伝いをする機会も増えています。
MY HOMETOWN 本八幡
この春ご閉館に立ち会った千葉県市川市本八幡のビジネスホテル。
ここは hometown : 故郷、住み慣れた街
の副題どおり、転勤族だった私にとって成人するまで最も長く暮らした愛着ある街です。
北口バスターミナルから総武線で都内へ。家族での外食や旅行の機会に。
子どもの頃、本八幡駅は非日常に連れていってくれる「窓」でした。
勝手知ったるこの街。
せっかくの機会ですので、店舗専門家としては本八幡発祥のあのチェーンについても触れさせて下さい。駅北口から3分、八幡一番街の路地に1967年に創業したのが
今や東証プライム、時価総額1400億のサイゼリヤです。この本八幡の地で、八百屋さんの2階でスタートした同ブランドは今や世界展開の一大チェーンに成長されました。
なお、この記念館は事前予約することで、日曜日のみ見学可能です。当時のメニューや厨房内も見学できるので、興味がある方はぜひ。
地域の暮らしの節目を彩ってきた、小さな駅前ホテル
今回ご閉館お手伝いをさせていただいたのは、1995年から27年間に亘り京成八幡駅前で運営を続けてこられた地域密着型のビジネスホテル「ジェイホテル」さん。
諸般のご事情により5月9日に閉館、長年地域に愛されたホテルがその幕を下ろしました。
名残惜しそうにじっと閉館のお知らせを見ながら「勿体ねえなあ」と呟く通りすがりのお爺さん、車窓を開けてホテルを指差す初老のご夫婦。
とりわけ街の方々にとって思い出深かったのは中国ラウンジ「味雅」であったようで、会食や宴会対応の個室や宴会場も併設されたこのお店は本八幡にお住いの皆さんの折々の暮らしを彩ってきたに違いありません。
総支配人の城(じょう)さんは
「閉店が決まってからは毎日、お客さんがひっきりなしで、満席でお断りすることもしばしば。前からあれだけ来てくれれば良かったのにね。」
と笑いながら、
「親が昔っから商売してたもんで生粋の八幡っ子でね。若柳という和菓子屋からおもちゃ屋、そしてホテルにしたのも随分早かったんだよ。」
そして城さんご兄弟で経営されていたので「ジェイホテル」なるほど。
とはいえビジネスホテル。
人流抑制や出社制限・リモート移行そしてインバウンド需要減の影響は全国規模、とりわけ観光業および店舗業においては非常に厳しい環境下に置かれたことと思料します。
もともとベットタウン、夜間人口の多い本八幡ですが、
ここ数年の乗降客数を都営本八幡駅のデータから調べてみました。
特にオリンピック需要も鑑み、万全の受け入れ準備を進めてこられた観光業の皆さまにとっては本当に青天の霹靂ともなった2020年。本八幡にあっては、TDRなど遊興施設の閉館というのも、少なくない影響があったかもしれません。
とあれ、2022年5月をもって閉館のはこびとなった、わが街本八幡のホテル。終始笑顔でお話して下さった城さん、
「寂しさもあるけどね、ずっとこの街で過ごしてきたから」
私ですら「あの角を曲がればケーキ屋さん、そしてクリーニング屋さんがあって、昔よく遊んでくれた八百屋さん」長く過ごしてきた街のお店をいまも覚えています。
きっと「久しぶりに駅前のホテルの中華料理屋いこうよ!え?なくなっちゃったの!」お盆に帰省されて驚く方も多いのではないでしょうか。
本八幡もここ10年計画で再開発が進むようです。