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絶滅危惧種‼ 街の金物屋

金物店をめぐる経営環境

昨今、金物店主さまから店じまいのご相談をいただくことも増え、多くのお店の閉店・廃業をお手伝いしてきました。

金物店は取扱品によって3つに大別されます。

①家庭金物(ハウスウエア)取扱店
やかんなどの家庭金物製品を中心に、荒物と呼ばれる箒などの家庭雑貨をお取扱されるハイブリッド展開されていることが多いです。

②利器工具専門店
刃物製品全般・大工道具・土農工具などのプロ向け製品のお取扱が多く、ご来店される方のニーズにあわせ、例えば包丁の品揃えが多ければ砥石など周辺品を揃えられています。

③建築金物専門店
建築・建材製品中心の品揃え。接着剤・塗料等やエクステリアもお取扱されています。現場に合わせ早朝から営業されているお店が多い印象です。

金物を取り扱う街の専門小売店、実は非常に厳しい経営環境に置かれ年々売上が落ち込んでおり、また廃業されるお店が増えているのです。とりわけ小規模経営の「街の金物屋」さんは、今や絶滅が危惧される状況となりつつあります。

定量データからその背景をはかってみましょう。

経産省の商業統計を見ると一目瞭然ですが、統計が残る期間では1982年の全国21,247店舗をピークに店舗数は漸減していっており、2014年には5,000店舗を切る状況となっています。実に44年間で75%以上の減少です。

一方で興味深いのは店舗あたりの売場面積の拡大です。店舗数が減り続けている金物店ですが、売場面積は実に35年間で4倍以上に広がっています。
商業統計では1982年から業種別統計とは別に業態別統計が公表されています。「住関連スーパー」カテゴリー(定義はセルフサービス方式、住関連商品販売額70%以上、売場面積 250㎡以上の店)、つまりホームセンターの登場がこの結果につながっているわけです。
業態別統計を追うと、1982年には金物小売業に占めるホームセンターの店舗数シェアは1%未満でしたが、1991年になると2%を超えています。また販売額でも1991年には約3割を占め、金物業種内での構造変化が進展していったわけです。金物業内に大型のホームセンターが増えた結果、1店舗あたり売場面積が拡大しているのですね。そして大型店の増加に伴い、競争力の劣る中小小売店が多数、閉店・廃業に追い込まれた状況が見て取れます。

特殊な商慣習からなる金物店経営

ホームセンターの台頭、そして100円均一など大量生産によるディスカウンター、さらにはECに顧客を奪われ、生活圏内で金物商品を供給する小売店「街の金物屋」は窮地に追い込まれていますが、さらに経営を難しくしているのが安定在庫の確保です。

元来、金物は日本のモノづくりにおける花形でした。利器はそれぞれ専門の職人がいて、手打ちや磨き仕上げになるので、商品供給は順番待ち、職人の気分次第のところがあったのです。商品は委託ではなく現金買取、納期も半年1年ずれることもザラにあったと聞きます。

長く取引をされている金物屋さんの強みは「信頼」に裏打ちされた仕入力でした。包丁には包丁職人が、鑿や鉋にいたるまで専門家がいます。プレイヤー同士の信頼ありきで商品供給を受け、カテゴリーキラーとして専売ができることが金物屋さんの差別化ポイントだったのです。また高品質の金物はいつでも換金できるという安心感がありました。

ところが大量生産による価格破壊が始まりました。手打ち品が海外廉価品との価格勝負で勝てるはずはありません。消費者には年に1~2回使うか分からない金槌に高いお金を出すより、100円均一で買ったほうが合理的だという選択肢ができました。

ロット買いできる工業金物製品に対し、職人の手による商品は、安定供給ができません。パッケージもありませんから、同じ職人が作った同じ商品でも卸問屋によって包装が異なるのです。さらに職人も高齢化が進み、またディスカウンターに市場を奪われ廃業が続くなど、ゲームチェンジャーの登場で堅い商売だったはずの金物市場は一気にプレイヤーの勢力図が塗り替わってしまい、絶滅の危機に至っているのです。

今でも街の金物屋さんは廃業・閉店の際に、ご近隣のまだ営業を続けている金物屋に在庫を引き継ぐ(買い取ってもらう)という習慣があります。商品を解っている同業界のプレイヤー同士、ここでも信頼でバトンをつないでいかれるケースが多いのですね。職人が減り続ける中、在庫確保は命題であり、事業存続のための統廃合。高齢化がすすむ街の金物屋さんですが、ファイティングポーズをとっている経営者も多くいらっしゃいます。

身近に金物店さんを見かけたら、それは全国に5,000店舗しかない、そしてこれからさらに稀少となる事業なのです。 しかしながら金物屋さんにもまだ勝ち筋はあります。その専門性と商品への愛を受け、我々も販路と付加価値サービスづくり、引き続き尽力していきます。がんばれ、街の金物屋さん!

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